経費計上できる福利厚生費の種類と条件

福利厚生

福利厚生費とは

まずはじめに福利厚生費とは何か?について押さえておきましょう。

福利厚生費とは、給料や賞与以外に会社が従業員のために支出する費用のことをいいます。従業員の生活の安定・維持・向上を支援し、飲食、住宅などの支給にかかる費用です。

福利厚生費として認められた経費は非課税であり課税率は0%です。しかし福利厚生費として妥当でないと判断された場合は、給与を支給したという扱いになり、所得税が課税されることになります。

条件を満たした福利厚生費は、全額を経費として計上することができます。そして法人税計算からは損金として除外されます。

そのため従業員の福利厚生を提供すると同時に、税負担を軽減する目的での利用を行うこともできます。金額の範囲、上限額の定めがなく、種々の支出を福利厚生費とすることができます。

しかし福利厚生費を経費計上するための条件としては、賃金ではないこと、全従業員を対象範囲としていること、金額が社会通念上妥当であることを満たすものでなければなりません。

取引先など社外の人のために支出するものは交際費になり、同じ飲食費であっても従業員に提供すれば福利厚生費、社外の人に提供されれば交際費に計上する必要があります。

交際費も福利厚生費と同じように損金算入により非課税として取り扱えるのですが、範囲や限度額が定められていますので、注意が必要です。

経費計上できる福利厚生費の条件

従業員のために法人が支出する費用で、次の条件を満たせば福利厚生費として認められます。

前提としては、費用の内容が福利厚生の目的に沿うものであることで、

  • 賃金ではない
  • 全従業員を対象としている
  • 金額が常識的な範囲内で、妥当である

範囲についての定めはありません。

福利厚生費として計上できれば、企業にとっては損金の扱い(非課税対象)となります。

従業員にとっても、福利厚生としてサービスを受けても給与扱いにならないので、所得税の負担増はありません。ですので企業、従業員の双方にとって節税になります。

逆に、課税対象となるのは、

  • 一部の従業員だけを対象にしている支出
  • 社会通念上妥当ではない支出

上記は、福利厚生費として非課税の取り扱いを受けることはできません。損金に算入されず、課税対象となります。

福利厚生の具体例と非課税の基準

多くの企業が導入している法定外福利厚生について、具体的に例を上げながら非課税の基準について紹介していきます。

通勤費

会社への通勤に対して支給される通勤費は、福利厚生費として計上することができます。

通勤費は、役員、社員、パート、アルバイトなど雇用形態にかかわらず支給することが可能です。

ただし、通勤費が非課税の対象となるのは、一番コストが安く、かつ合理的と思える方法と経路で通勤した場合の通勤定期券などです。

また、自動車・自転車通勤に対しても相当分の通勤費を支給することができます。

ただし限度額があり、電車やバスの公共交通機関を使って通勤する場合は、月額15万円まで、自転車や自動車通勤の場合は距離によって限度額が決まっていて、片道55kmを超える場合が最大で31,600円までとなっています。

出張手当

業務のための出張について、出張手当を支給することができます。

日当は「社会通念上相当な金額」とされていますが、明確な上限金額は定められていません。しかし常識からあまりにかけ離れた金額が支給された場合は認められませんので、常識的な範囲での支給を行う必要があります。

また出張手当については、出張旅費規程を作成している必要があり、税務調査では必ず確認されます。もし未作成の場合は経費計上が認められないこともありますので、注意が必要です。

健康診断の費用

健康診断の費用も福利厚生費として計上するには、次の要件を満たさなければなりません。

  • 一部の人だけでなく、役員・従業員すべてが健康診断の対象者であること
  • 受診した人すべての費用を会社が負担すること
  • 常識の範囲内の費用であること

健康診断(一般健康診断)は、労働安全衛生法第66条で、従業員に1年に1度の健康診断を受けさせることは、会社の義務として定められています。

健康診断の費用は、会社が払わなければならないとの決まりはありませんが、多くの会社が費用を負担しています。

ですので、要件を守り福利厚生費として計上するのが良いのではないでしょうか。

社宅

役員や従業員から賃貸料相当額の一定割合を徴収していることが条件であれば、社宅家賃も福利厚生費として計上することができます。福利厚生費として計上できる徴収率の条件は従業員と役員で異なります。

従業員の場合、賃貸料相当額の50%以上を支払っているなら、会社が負担する賃貸料相当額の残額を福利厚生費として計上することができます。

食事の支給

食事の支給は福利厚生費とすることができますが、現物支給が原則です。しかし企業によっては食堂の整備などが難しいケースがあります。

そのようなときは、民間の食事補助サービスを利用すれば、簡単に食事補助を導入できます。

主な食事補助サービスには、お弁当の宅配、全国の飲食店やコンビニなどが利用できる代行業者サービスなどがあります。

食事の支給を福利厚生費とするには、次の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 役員や従業員が食事代の半分以上を負担していること
  2. 食事の金額から役員や従業員が負担する金額を引いた残額が、1カ月当たり税抜きで3,500円以下であること

もし要件を満していない場合は、残額は給与扱いとなり課税対象になります。

食事は従業員が必ず取るものですので、企業に勤める従業員の多くが支持している満足度の高い福利厚生といえるでしょう。

残業時や宿直・日直の食事代

残業時の食事を提供した場合、その費用を福利厚生費として計上することができます。条件は、勤務時間外の業務に対してのものであること、内容が通常の範囲内であることです。

残業をした従業員に食事(夕食、夜食等)を支給する場合、現物支給に限り、支給した食事は原則として全額を福利厚生費に計上できます(所得税基本通達36-24)。

残業への食事代(夕食代・夜食代)については、飲食店などへ行って食事をする場合でも、会社がコンビニ弁当を購入して支給する場合でも認められます。

外部の福利厚生施設利用の費用

自社で用意するのが難しいため、外部の福利厚生サービスを利用している場合は、その利用のために支出したお金は福利厚生費として計上することができます。

昨今では外部の福利厚生サービスを利用する会社が増えています。その利点は一企業で行うより、多くの会員を集めてスケールメリットを生かし、より安価な福利厚生サービスを受けれる点にあります。

また福利厚生サービスの専門会社は、福利厚生の内容を常に新しいものに入れ替えができ、働く人々のニーズを満たすことができるというメリットがあります。

その他

これまで上げてきたもの以外で、人間ドックや永年勤続記念品、クラブ活動、サークル活動に対しての補助、および資格取得費用など、基本的に全社員が利用でき、常識の範囲内での支給であるものは福利厚生費の対象となります。

福利厚生費と認められるには、福利厚生サービスを受ける機会の平等性が保たれていること、金額が常識の範囲内で妥当なことが担保しておきましょう。

福利厚生費として計上できるかどうかを正しく判断することは、節税のためにも大事なことです。

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