福利厚生とは?
はじめに福利厚生とは何か?ということで、辞書で引くと、「企業が従業員とその家族の福利を充実させるために設けた制度や施設」となっています。
では、「福利」は、幸福と利益。幸福をもたらす利益。
「厚生」は、人間の生活を健康な豊かなものにすること。
と書かれていますので、これらを満たす制度や施設が福利厚生ということになります。
そして福利厚生には、法律で定められているもの「法定福利」と、それぞれの企業が独自で設ける「法定外福利」があります。
「法定福利」
法律で設けることが義務付けられているもので、健康保険や厚生年金保険が該当します。
・社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険)
・労働保険(雇用保険・労災保険)
・子ども・子育て拠出金
「法定外福利」
企業独自のもので、社員旅行や、社宅、社食などが該当します。
・住宅手当・家賃補助
・通勤交通費支給
・育児・介護関連(産休・育休、介護休暇など)
・健康・医療(定期健康診断や人間ドック、産業医の配置など)
・休暇制度(リフレッシュ休暇や誕生日休暇、創立記念日休暇など)
外部サービスで提供されるもの
外部サービスを利用した福利厚生を導入する企業が増えています。これは法定外福利となりますが、企業独自で提供するよりもコストを大幅に抑えることができます。
・宿泊・旅行:保養所の利用、
・健康促進
・育児・介護支援:育児および産後休業、介護および看護休業
・自己啓発:スクールの補助金負担
・スポーツクラブ
・「パッケージプラン」「カフェテリアプラン」
など
福利厚生のはじまり
福利厚生はいつ頃から始まったのでしょうか?その起源について見ていきましょう。
それは、明治時代に従業員を確保し、意識的に働いてもらうための仕組みとして導入されました。
住宅、食事施設の補助、健康面を考えた治療施設の完備などが、設けられたのが始まりだといわれています。
というのも、明治時代になり「富国強兵」の国策で、紡績工場、製鉄所など多くの工場が建てられました。そして日清戦争・日露戦争により、さらに軍需産業が盛んになってきたのです。
そのため、多くの労働者が集められたのですが、賃金も安く、過酷な労働環境でありましたので、労働者が病気になったり、逃げ出したりしたそうです。
現在で言えば超ブラック企業というところでしょうか。ということで経営者は労働力を確保するために、経営者が責任を持って、労働者の生活の面倒を見るという動きとなり、これが日本での福利厚生の始まりと言われています。
大正時代から以降は、福利厚生が制度化され、福利厚生に関する法律(法定福利)が定められてきました。
その後、高度経済成長期で経済が好況だったバブル経済の際は、福利厚生も豪華なものに変化してきました。
大企業は、より質の高い労働力を確保するために、保養所や社宅を設けたり、社員旅行などが活発に行われるというようになりました。
しかしバブルの崩壊以降では、企業は保養所や社宅などのハコモノの維持が困難とななってきました。また労働者の生活スタイルの変化で、労働者自身の教育や自己啓発に注力するよう福利厚生も変化してきました。
1990年代中盤までは、社宅や保養所といった福利厚生施設を充実させ、従業員の満足度を高めるものでした。施設はスケールメリットが必要であるため、大企業であるほど実施しやすいものであった。
逆にスケールメリットがない中小企業には負担が大きく実施できないものでありました。しかし現在の福利厚生は、施設ではなく従業員自身に資金を投じる福利厚生となってきています。
近年では大企業においても、福利厚生を自社だけで提供するには、莫大な人的・金銭的コストがかかるため、福利厚生のアウトソーシングサービスを利用する企業が増えてきています。
上記の様に、福利厚生は企業環境を取り巻く情勢と、労働者の意識の変化により、目的やスタイルが変革します。そのため時代に適応した福利厚生の提供が求められるということです。