労働基準法とは?
労働基準法(以下労基法という)は労働者を守るための法律で、適切な労務管理を行うため、労働条件について様々なルールを定めています。
例えば、1日の働く時間や休憩、休日、賃金の支払い方などを定めており、会社側はそれを必ず守らなければいけません。
労基法違反では、罰金刑・懲役刑の定めがあります。そうして労基法の効力を確実なものとしています。
労基法の基本的な理念は、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものではならない(労基法第1条)」とした労働条件の保障です。
また労基法で定める労働条件の基準は最低基準であり、この基準を理由に低い労働条件ではなく、向上を図るよう努めなければなりません。
労基法が適用される事業
労基法は原則、すべての事業に適用されます。(同居の親族のみを使用する事業や、お手伝いさんには適用されません)
労働者と使用者の関係
労基法は、労働者と使用者との関係について定めている法律であり、どのような人が労働者であるか、また使用者にあたるのかを整理しておく必要があります。
労働者とは?使用者とは?
労働者とは、次の3つのすべての要件を満たすものをいいます。(労基法第9条)
①職業の種類を問わない
②事業または事務所に使用される者
③賃金を支払われる者
労働者は、正社員、パート、アルバイト、契約社員、嘱託社員などの名称や呼称に関係なく、労働に対して給与が支払われる従業員のことです。
使用者とは、(労基法第10条)
①事業主
②事業の経営担当者
③その事業の労働者に関する事項につ いて、事業主のために行為をするすべての者をいう。
使用者は、代表取締役や理事長などの経営者だけでなく、労基法に関わる労務管理を任せられている者も含まれます。(支店長、営業所長、人事部長)
労働契約とは?
労働契約は、口頭、書面にかかわらず、会社と従業員の双方で約した場合に成立します。契約内容は、契約を結ぶ者同士で自由に決めることが大前提です。
労基法では、勤務時間や、残業の有無、賃金、休日などの労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものであるとされています。(労基法第2条)
また労基法では、「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による」と規定されています。
つまり、双方で労働条件を合意していても、労使当事者の意思に関係なく、労基法の基準に達していない労働条件は無効になるということです。
例えば、下記のような労働契約は無効です。
・3年を超える契約期間(労基法第14条)
・仕事のミスによる損失に対し、あらかじめ違約金や損害賠償金額を決める(労基法第16条)
・前借金分は賃金を支払わない(労基法第17条)
・毎月の賃金の一部を貯金しなければ雇わない(労基法第18条)
・試用期間中に退職した場合は賃金を支払わない(労基法第24条)
・残業代を支払わない(労基法第37条)
・年休を与えない(労基法第39条)
労働契約を結ぶとき
使用者と労働者の雇用関係は、労働契約を締結することによって始まります。労働契約を結ぶにときには、労働条件のうち、賃金、労働時間などの一定の事項を明示することを使用者に義務付けています。
この明示事項には、必ず明示しなければならないもの(絶対的明示事項)と、定められている場合には明示しなければならないもの(相対的明示事項)があります。
絶対明示事項は書面提示が必要です
特に重要な次の6項目(絶対的明示事項)については、労働者に対して書面として交付しなければなりません。(労基法第15 条)
- 労働契約の期間に関する事項(ある、なし。ある場合はその期間)
- 期間の定めのある労働契約の場合には、更新についての基準に関する事項
- 仕事をする場所および仕事の内容に関する事項
- 仕事の時間や休みに関する事項(仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、交替制勤務のローテーション等)
- 賃金の決定、計算および支払いの方法、締切と支払日の時期、昇給に関する事項
- 労働者が辞めるときのきまり(退職に関すること(解雇の事由を含む))
労働条件の明示は、労働契約を結ぶ際に明示しなければなりません。そして明示された労働条件が実際と異なる場合には、即時に労働契約を解除することができます。
労働契約の期間
労働契約には、契約期間を定めるものと定めないものがあります。
期間の定めのない方は、一般的には正社員と呼ばれる人です。一方、期間の定めのある方(有期労働契約者)は一般的には契約社員やパート社員、アルバイトと呼ばれる人です。
そして期間を定めている場合、その期間は会社を辞めることができないため、長期の労働契約は労働者の自由を不当に拘束することになるため、契約期間に上限が設けられています。
契約期間の上限
原則、1回の契約期間の長さは3年が限度です(労基法第14条)。ただし契約の更新は認められていますので、結果的に同じ職場に3年を超えて継続して働いている労働者も少なくありません。
しかし平成24年8月に「労働契約法(第18条)」が改正され、有期労働契約者が5年を超えて反復更新された場合は、有期労働契約者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されます。
(平成25年3月31日以前に開始した有期労働契約は通算期間に含めません)
契約期間の特例
高度の専門的知識を有する労働者で、その知識が必要である業務に就く場合には、1回の契約期間の長さの上限が5年に伸びます。
高度の専門的知識を有する労働者とは、博士の学位を有する者、公認会計士、医師、弁護士、社会保険労務士などがこれに該当します。
また満60歳以上の労働者との契約期間についても上限を5年としています。こちらは雇用安定の観点から規定されたものです。
有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準
期間の定めのある労働契約については、労基法第14条2項に基づく「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」に基づき、労働基準監督署長等は使用者に対し、助言・指導が行われます。
「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」では、期間の定めのある労働契約を締結、更新、あるいは雇止めをする場合の留意点が示されています。
雇止めの予告
使用者は有期労働契約を更新しない場合には、少なくとも契約期間が満了する日の30日前までに雇止めの予告をしなければならない。
※予告が必要なのは、契約を3回以上更新している場合、または1年を超えて継続雇用している場合。
雇止め理由の明示
使用者は、上記の雇止め予告後に、労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なく交付しなければなりません。
契約期間についての配慮
使用者は、契約を一回以上更新し、かつ1年以上継続して雇用している有期契約労働者との契約を更新しようとする場合は、契約の実態及びその労働者の希望に応じて契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません。