労働時間の仕組みとルール

労働基準

労働時間とは?

労働時間とは従業員が会社の監督・指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。従業員が働く時間だけでなく、それに付随する仕事の準備や片づけなどの時間も労働時間となりえます。

また実際に作業していない待機時間や仮眠時間といった”手持ち時間”も会社の監督・指揮命令下にあれば労働時間です。

貝角社労士
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会社の監督・指揮命令下にあれば労働時間です

 

会議が始まるまでの待機時間、途切れた資材の到着を待って作業の手を止めている場合など、実際には何もしていなくても、その場を離れることができず自由にできない時間であれば労働時間にあたります。

労働時間のルール

労働時間の原則は、1日の労働時間は休憩時間を除いて8時間以内、1週間の労働時間は休憩時間を除いて40時間以内と労基法に定められています(第32条)。

これを「法定労働時間」といいます。会社が定める1日、1週間の労働時間を「所定労働時間」といい、所定労働時間は法定労働時間を守らなければなりません。

貝角社労士
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所定労働時間は法定労働時間を超えてはいけません

 

ただし従業員が10人未満の職場で、商業、映画演劇業(制作を除く)、保健衛生業、接客娯楽業の場合は、1週44時間まで勤務させることができる特例があります。

1日とは、0時から24時までのことをいいますが、一勤務が24時をまたぐ場合には、始業時刻のある日を1日として取り扱います。(3交代制勤務を除く)

1週間とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、日曜日から土曜日までのいわゆる暦日をいいます。

規定の適用対象外となるもの

法定労働時間、法定休日には以下の適用対象外があります。
①農業、水産業などの仕事に就いている者
②管理監督者(年休の規定は適用される)
③監視、または断続的労働
④宿日直勤務
⑤機密の事務を取り扱う者
※③④は管轄の労働基準監督署の許可が必要

労働時間の把握と記録

2019年(平成31年)4月に改正労働安全衛生法が施行され、労働時間の状況の把握と記録をすることが義務付けられました(安衛法第66条の8の3)。

今後はより一層、過重労働による健康障害防止のため、産業医による面談などを行い、従業員の心身の健康状態を管理していくことが求めれています。会社は従業員の健康管理の観点からも、従業員の始業・終業時刻を適切に把握し、記録を行いましょう。

労働時間の把握の仕方

【原則】

・使用者が、自ら労働者の始業と終業を確認して記録する方法
・タイムカードやICカード、パソコンの使用時間の記録など、客観的な記録による方法

【例外】

・直行直帰などで、原則の方法が取り得ない場合は、自己申告によることができる。

最近の労務管理ソフトでは、スマホ等を使い、始業・終業時刻の打刻と記録を行うことができます。営業職で直行直帰の人や、タクシー、トラック等のドライバーの人も遠隔で始業・終業の時刻を把握することができます。

変形労働時間制

職場によっては、夏休みやゴールデンウィークが忙しく、逆に冬場の2月などは暇になる仕事があります。また事業の種類によっては、月初めと月末では業務量に差が出る場合もあります。

このような場合、忙しい時期は労働時間を長く、逆に暇な時期は労働時間を短くするというように、所定労働時間を仕事の繁閑や特殊性に応じて勤務時間の配分などを取り決める制度を「変形労働時間制」といいます。

貝角社労士
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繁忙期・閑散期がある業種に適しています

 

この制度は、業務の忙しいときと比較的暇なときに応じて、労働時間をあらかじめ計画的に配分し、一定の期間を平均して法定労働時間の範囲内に収め、全体で労働時間を短縮することをねらいとするものです。

導入の際は、管轄の労働基準監督署への届出や、就業規則等へ明記しましょう。

変形労働時間制の4つの種類

①1か月単位の変形労働時間制(第32条の2)

1か月以内の一定期間内で、労働時間を変形する制度です。1か月以内の一定の期間を平均して1週間が40時間以内に収まるときに、あらかじめ1日の労働時間数や休日数を決めておけば1日8時間、1週40時間を超えても法定労働時間として扱われます。
※特例事業場は44時間

1か月単位の変形労働時間制の最長労働時間

暦日数 月の所定労働時間
31日 177.1時間(特例事業場は194.8時間)
30日 171.4時間(特例事業場は188.5時間)
29日 165.7時間(特例事業場は182.2時間)
28日 160.0時間(特例事業場は176.0時間)

(例)ある飲食店の場合。月曜日から木曜日の労働時間が1日10時間で、金曜日から日曜日が休日の変形労働時間制(合計週40時間)

10時間 10時間 10時間 10時間

(例)ある小売店の場合。月曜日から土曜日が1日7時間労働で、月の休日数が6日の変形労働時間制(2月のケース、合計月154時間)

第1週 第2週 第3週 第4週
42時間 42時間 28時間 42時間

※1週40時間を超えても、月の所定労働時間内ならばOK。

②1年単位の変形労働時間制(第32条の4)

時季によって繁閑がある会社は、1か月を超え1年以内で、1週間の労働時間が平均40時間に収まるとき、あらかじめ1日の労働時間と休日(労働日)を決めておけば、1日8時間、1週40時間を超えても法定労働時間として取り扱われます。

暦日数 法定労働時間の総枠
366日 2091.4時間
365日 2085.7時間

1年単位の変形労働時間制
・1日の所定労働時間の限度は10時間まで
・1週の所定労働時間の限度は52時間まで
・連続労働日数は、原則6日まで
・対象期間の労働日数は1年280日以内

③1週間単位の非定型的変形労働時間制

飲食店や旅館などの事業では、週末が忙しく、週の真ん中は比較的暇というような業種では、1週間に40時間を超えなければ、忙しい日は1日10時間まで労働させることができます。

(例)1週間の合計40時間

9時間 6時間 6時間 9時間 10時間

採用できる業種と規模が決まっています
・小売業、旅館、料理店、飲食店
・労働者数が30人未満の事業

④フレックスタイム制(第32条の3)

フレックスタイム制とは、3か月以内の一定期間の総枠時間をあらかじめ決め、その範囲で従業員に始業と終業時刻を自由にきめさせるものです。そのとき、1日8時間、1週40時間を超えて労働させることができます。

フレックスタイム制は精算期間などを会社と従業員とで話し合い、労使協定および就業規則等で定めます。対象期間が1か月を超える場合は管轄の労働基準監督署への届出が必要です。

労使協定で定めること
①対象労働者の範囲
②精算期間(対象期間)
③精算期間における総枠・・40 x (月の暦日数)÷ 7
④1日の標準労働時間
⑤コアタイム(任意設定)
⑥フレキシブルタイム(任意設定)

フレックスタイム制は従業員の個々の仕事や事情に合わせた労働時間制度です。従業員の意欲や能力を大いに発揮できるので、多様な人材の受け入れにつながります。

みなし労働時間制

みなし労働時間制とは、実際に労働者が何時間働いたかで労働時間を算定するのではなく、あらかじめ労使協定などで定められた時間を労働者の実労働時間とみなす制度です。

みなし労働時間制は次の3種類
①事業場外労働に関するみなし労働時間制
②専門業務型裁量労働制
③企画業務型裁量労働制

①事業場外労働に関するみなし労働時間制

出張など外出して行う業務、営業職や記事の取材、在宅勤務など社外で働く人は、実際に働いた時間数を使用者は把握することができません。このような場合、実労働時間が何時間であっても、原則、所定労働時間働いたものとみなします。

みなし労働時間制の対象業務は、事業外における勤務であり、使用者の具体的な指揮・監督が及ばず、労働時間の算定が困難な従業員に対して採用します。

ただし、携帯電話等で随時、使用者の指示を受けながら労働している場合は対象とはなりません。

労働時間の算定方法

みなし労働時間制は、次の3つの方法で労働時間をみなすことができます。
(1)所定労働時間
(2)通常必要時間(所定労働時間を超えて労働することが必要な場合、その勤務を行うために通常必要とされる時間)
(3)(2)について労使協定を定めた場合の時間(当該業務の遂行に通常必要とされる時間)

②専門業務型裁量労働制

商品開発や情報処理システムの分析、システムコンサルタントなどのいわゆる専門的な知識や技術をもった人に、労働時間を拘束せず能力を発揮してもらうために、労働時間の配分を使用者が決めるのではなく、労働者の裁量に委ねるもの。

あらかじめ労使間で定めた時間分を労働時間とみなして賃金を払う制度です。適用業務の範囲は厚生労働省が定めた業務に限定されています。

専門業務型裁量労働制の対象業務
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/senmon/
引用:厚生労働省HP

③企画業務型裁量労働制

本社・本店などで、会社の経営状態を分析し、経営計画を策定するような業務を担当している場合、その業務を適切に遂行するためには労働者の裁量に委ねることが求められます。

導入にあたっては、労使委員会の設置(会社と従業員で構成)、労使委員会の決議・本人の同意、所轄の労働基準監督署長への届出が必要です。

裁量労働制の深夜業務について
裁量労働制で深夜業務を行わせた場合、深夜労働の規定や休憩の規定は適用されます。深夜労働は適切に把握しておかなければなりません。

 

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