必ず知っておきたい賃金のルール

労働基準

賃金の重要性

賃金は労働時間と並んで労働者にとっては、最も重要な労働条件です。というのも働いて得られる賃金が自分や家族の生活を支えているからです。

使用者はどのような事情があっても生活の糧である「賃金」をしっかり支払わねばなりません。

貝角社労士
貝角社労士

賃金は従業員はもちろん、その家族も支えています

そのためにも労働基準法において、賃金とはどういうものであるかを定義し、賃金の支払いに関して様々な保護規定をおいています。

賃金とは

賃金とは、名称の如何を問わず、労働の対償 として使用者が労働者に支払うすべてのもの」をいいます(労働基準法第 11 条)。

就業規則等であらかじめ支給要件が明確に定められている、賃金、給料、手当、その他賞与や退職金なども賃金に含まれます。

したがって、
1 使用者が労働者に支払うもの
2 労働の対償であるもの
2つの要件を満たすものは、名称の如何を問わず全て賃金となります。

賃金の決定の仕方や額については、使用者と労働者が対等の立場で決定する のが基本です。しかし以下の点について気をつける必要があります。

・使用者は、労働者に対し、最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりませ ん(最低賃金法第4条)。

・使用者は、事業場ごとに賃金台帳を作成しなければなりません(労働基準法第108 条)。

最低賃金の種類
最低賃金には、すべての労働者とその使用者に適用される「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者とその使用者に適用される「特定最低賃金」があり、それぞれ都道府県ごとに決められています。
両方の最低賃金 が同時に適用される場合には高い方の最低賃金が適用されます。

地域別最低賃金の全国一覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/

厚生労働省HPより引用

賃金支払の5原則

労働者に賃金が確実に支払われるように、賃金の支払い方法について次の5つが規定されています。

貝角社労士
貝角社労士

賃金の支払い方法について5つのルールがあります

 

①通貨で支払う
賃金は通貨(お金)で支払わなくてはなりません。現物で支払ってはなりません。
ただし、労働者の合意を得た場合は銀行振込等の方法をとることができます。
また、通勤手当などをお金ではなく定期券で支給する会社もあります(これを「現物支給」という)、この場合も労働者と書面による協定(労働協約)を結べば、現物支給でも構いません。

②直接労働者に支払う
賃金は労働者本人に支払わなければならず、労働者の代理人や親権者等に 代わりに支払うことはできません。
たとえ労働者本人の委任状があっても、親などの法定代理人であっても支払うことはできません。ただし例外として病気で本人が受け取りに来れない場合などは、労働者の使者に支払う場合は労基方に違反しないとされています。(家族が受取るなど)

③全額を支払う
賃金はその全額を支払わなければなりません。ただし、ただし、所得税や社会保険料など、法令で定められているものの控除は認められています。また労使協定があれば、賃金の一部を控除して支払っても構いません。(社宅の費用など)

④毎月1回以上支払う
賃金は毎月1回以上支払わなければなりません。ただし臨時に支払われるものや賞与については毎月1回以上支払う必要はありません。

⑤一定の期日に支払う
賃金は臨時に支払われるものや賞与等を除いて、一定の期日に支払わなければなりません。一定の期日ですので「毎月15日」というように明確に支払い期日を定めてその期日に支払う必要があります。

給与明細書
労働基準法には給与明細書を必ず渡さなければいけないという決まりはありませんが、所得税法において、給与を支払う者は給与の支払を受ける者に支 払明細書を交付しなくてはならないと定められています。したがって、使用者 は労働者に給与明細書を交付する義務があり、給与を支払う際に交付しなけれ ばいけません。

賃金形態の種類

賃金形態には主に以下の5種類があります。会社に適したものを採用し、就業規則等に定めましょう。

月給制
月単位で基本給を定め、実際の出勤日数に関係なく毎月定額の給与を支払う。その期間中の欠勤日数に応じて減額されないものを「完全月給制」という 。

日給月給制
月単位で基本給を定め、遅刻や早退、欠勤があれば給与からその分を差し引く。「月給制」の一 種 。

日給制
1 日単位で基本給を定め、基本給 × 勤務日を給与として支給。パート、アルバイトなどで多く採用されている。

年俸制
1年単位で給与を定め、分割して毎月支給。ボーナスが年俸に含まれている場合は、ボーナス月に多く振り分けることもある。なお、年棒制も割増賃金の規定は適用される。

出来高払制
労働の成果や出来高に応じて給与を決める方式で、「実績給制」「歩合給制」ともいう。出来高が少ない時も労働時間に応じて一定額の賃金を保障(第27条)。

非常時払

「非常時払」とは、労働者や家族が急な出費を必要とするときに、今まで働いた分の賃金を請求するというものです。使用者は請求があった場合には、賃金支払日前であっても支払わねばなりません。

請求できるのは次の費用に限られる。
出産、疾病、災害、結婚、死亡、やむお得ない事情で1週間以上帰省する場合。

休業手当

労働者は働く用意があるのに、会社の都合による場合など、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」によって、労働者が働くことができなかった場合 には、労働者の生活を保障するために、使用者は平均賃金の6割以上 の休業手当を支払わなければなりません。

休業手当を支払わなければならないケース
・親工場の経営難から下請け工場が資材・資金の獲得ができず休業する場合
・金融難、円の急騰による輸出不振など経営難が原因で休業する場合

休業手当を支払う必要のないケース
・天災などの不可抗力による休業
・使用者の正当な争議行為による休業

 

 

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