雇用保険料率引き上げの背景
2021年11月26日のニュースで、雇用保険料率が2022年度に引き上げられる予定で有ることが流れてきました。
引き上げの理由は、コロナ禍の影響で雇用調整助成金(以下、雇調金)の給付が増大し、これまでの積立金も逼迫しているためとあります。
これまでに実際支払われた雇調金の支払い状況ですが、厚生労働省の発表によると、2020年度の雇用調整助成金の申請総件数が2,363,590件(うち支給決定件数2,284,982件)、支給決定額は29,410.66億円。
緊急雇用安定助成金の申請総件数は、715,058件(うち支給決定件数682,419件)、支給決定額は2,144.38億円。
2021年度(11月19日時点)は、雇用調整助成金の申請総件数が4,021,435件(うち支給決定件数3,966,845件)、支給決定額は45,370.31億円。
緊急雇用安定助成金の申請総件数は、1,230,060件(うち支給決定件数1,200,908件)、支給決定額は3,679.38億円。
2020年度と2021年度(11月19日時点)の総額は、80604.43億円(8.06兆円)にも上っています。
雇用保険料率はいくら引き上げられるのか?
現行、令和3年度(2021年度)の雇用保険料は、一般の事業の場合、労働者負担が0.3%、事業主負担が0.6%の合計0.9%です。
政府内の引き上げ案では、雇用保険料のうち「失業等給付」分を計0.2%から計0.6%までの引き上げが審議されています。
雇用調整助成金(雇調金)の原資となり企業のみが負担する「雇用保険2事業」は、0.3%から本来の率である0.35%に戻す方向となっています。
令和3年度の雇用保険料率https://www.mhlw.go.jp/content/000739455.pdf
引用:厚生労働省HP
雇用保険料の引き上げを実施した場合、0.1%の引き上げで保険料収入は、年2千億円増えるものと計算されています。
雇用保険料の引き上げにより、企業の負担は増加します。また雇用保険だけでなく、社会保険料も上がっている状況です。
今後の予定
政府は雇用保険のあり方や料率の引き上げについて専門家を集め、審議会を開催する予定です。そこでは労使の保険料率引き上げや、国費投入の在り方についても議論される予定です。
審議会で雇用保険制度の運用方針が決まれば、雇用保険の料率を変える法案は2022年に提出される見込みです。
現時点では、新型コロナ感染症の波も収まっていますが、第6波や今後の感染状況で、さらに雇調金の給付が嵩むことも考えられます。
審議会、さらに国会での法案審議の状況を注視しておく必要がありそうです。